大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和30(オ)979 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人岡本喜一の上告理由について。

所論は、原審が、上告人の解約申入れの正当性につき、本件家屋の階下の賃貸部

分について生じ、階上の部分については生じないと判断したことを非難し、借家法

一条の二に違背した違法があるとして各理由を主張する。

所論(一)において主張する借家法一条の二にいわゆる「正当ノ事由」とは、賃

貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照し妥当と認め

られる理由をいうのであるから、所論のように「上告人の長女D、やがて迎えるべ

き夫、従業者等の居住する部屋」まで考えることは、本件においては、かえつて借

家人の利益を無視する考慮たるに帰し採用に値しない。その他の詳細に論述する各

理由も、結局上告人自身のみの利害に立つ主張であつて、とうてい原審の判断を不

当とするに足りない。

所論(二)(イ)の被上告人の賃料不払の事実は、原審が正当の事由の有無の判

断につき考慮に入れていること明らかである(原判決理由三の(一))。同(ロ)

の増築改造工事については、原判決の引用する一審判決は、所論増築工事が保健所

から修理を命ぜられたもので営業上の必要からやむを得ずしたものであることが認

められる旨判示しているのであつて、被上告人が右の工事をしたからといつて、当

事者間の信頼関係を破る程の違法性があるものとは認められない。同(ハ)の上告

人が食堂の経営の一切を被上告人に譲渡したものであることは第一審判決の確定す

るところであり、原判決がこの事実をも「正当ノ事由」を判断するに当つて一つの

考慮に入れたことは正当である。その他(ニ)(ホ)の各所論は、原審の判断と異

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なる見解を主張するものであつて、いずれも原判決に所論のような違法ありとする

に足りない。

所論(三)は階上階下の広さと当事者の家族の数とを比較し、原審の判断を非難

するのであるが、所論をもつてしても原判決を不当とすることはできない。所論は

結局異なる見解を主張するにすぎない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 小 林 俊 三

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

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